Dance with Market

FOMCを終えて - 円高だけがおかしい

by 広木 隆

この秋のビッグイベントのひとつ、日銀の政策会合とFOMCが終わった。日銀は動き、FRBは動かなかった。それを受けた市場の反応は、株高・円高となった。21日の東京市場で日経平均は300円超も急騰しドル円は円安に振れたが、東京市場が閉まった直後からすでに逆の動きとなり、昨日のNYのクローズでは1ドル=100円30~40銭まで円高が進み、シカゴCMEの日経平均先物は1万6505円と日銀会合前の水準に逆戻りした。

秋分の日で東京市場が休場の今日22日もNY市場からの流れを引き継いで為替市場では円高基調での推移が続いた。ドル円は14時過ぎに100円20銭をつけた。ところが財務省・金融庁・日銀の緊急会合が伝わったあたりから円高に歯止めがかかり、欧州の株式市場が全面高で始まると100円台後半に戻している。

そしてこれが圧巻だが、GLOBEXで24時間動いているシカゴCMEの日経平均先物は19時過ぎに1万6775円まで上昇、昨日の高値を抜いてきた。

話が前後したが昨日のNYダウ平均も、FOMCの結果とイエレン議長の会見を受けて引けにかけてほぼ一本調子の上昇となった。この反応について一歩踏み込んだ解釈をするのは難しいが、それは別の機会に述べよう。今は単純に利上げ見送りを好感したとしておこう。これを受けた今日のアジア市場は堅調で、上述した通り欧州株市場は大幅高でのスタートとなっている。

と、いうわけで冒頭で総括した通り、日銀-FOMCを通過した後の市場の反応は、株高・円高というわけだ。

もう一度、言おう。日銀は緩和強化に動き、FRBは利上げを見送った。だから「リスクオン」となって株は上昇している。セオリー通り、極めて自然な動きだ。不自然なのはドル円相場である。ドル円はロンドン時間ですでに100円台まで円高になっていたからFOMCでの利上げ見送りはほとんど材料になっていない。円の材料のみ、すなわち日銀の政策に対する懐疑的な見方で円高になっている。しかし、この状況から勘案すると、ドル円相場だけが間違っている可能性が高い。

日銀の政策が不十分ということなら、次は間違いなくマイナス金利を深堀りしてくるだろう。そのくらいのことが読めないのだろうか。今見えているファクト(事実)だけで動いているように思える。アルゴリズム取引全盛の時代だから仕方ないのかもしれない。

ドル円相場は、株式相場のリスクオン地合いに反応していない。これもおかしいところだ。

金利差という点では、いくら日本がイールドカーブを立たせると言っても10年債利回りはゼロに張り付く。一方の米国10年債はじり高傾向にある。ましてやイエレン議長は年内利上げに含みをもたせる発言をした。この先の展開を考えれば、
短期金利:日本はマイナス金利を深堀り、米国は利上げ
長期金利:日本はゼロ%近辺で固定、米国は(おそらく)じり高
となって、金利の観点からはどう考えてもドル高円安である。

それでもドル円相場が円高基調を変えないのはなぜか?トレンドがトレンドを規定するからだろう。みんながこれまでの流れを引きずっていて、そう簡単に見方を変えられない。行動ファイナンスでいう「アンカリング」が強い世界なのだ。

早い話がチャートである。一目均衡表の雲で跳ね返される。75日の移動平均に頭を抑えられる。日銀の決定を受けた21日の東京時間の上ヒゲまで75日線に頭を抑えられているのは、もはや笑えるレベルだ。

そのくせ下値は1ドル=100円が鉄板になってきているようだ。話は飛ぶが、いっそデノミでもして1ドル=1円にしたら為替はずっと安定するだろう。そう考えればデノミは非常に有効な景気対策だと思う。話が飛んだついでに言えば、ドル円相場のスタートは1ドル=360円ではない。それは戦後の新円の話である。ドル円相場の始まりは、明治初期の新貨条例で円が誕生した時のレート、1ドル=1円である。

話をもとに戻すと、今のドル円相場の円高は、ほとんどまっとうな理由がない。米国景気の不安感からドル安=円高になるなら話はわかるが、今の相場はその材料で動いていない。明日、東京市場が開いて、日本株が堅調だった場合、それでも円高が是正されないとすれば、日本株はますます為替離れを進めていくだろう。とても良いことだと思う。

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