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今週の相場展望

by 広木 隆

日比谷シャンテで「ある天文学者の恋文」という映画を観た。「ニューシネマ・パラダイス」を撮ったジュゼッペ・トルナトーレ監督と、「ニューシネマ」で音楽を担当したエンニオ・モリコーネとのコンビによる最新作だ。

著名な天文学者エドと彼の教え子エイミーは、皆には秘密の恋を謳歌していた。しかし、そんなエイミーの元に突然届いたエドの訃報。現実を受け入れられないエイミーだが、彼女の元にはその後もエドからの優しさとユーモアにあふれた手紙やメールや贈り物が届き続ける。エドの遺した謎を解き明かそうと、エイミーは彼が暮らしていたエディンバラや、かつて二人で時間を過ごしたイタリア湖水地方のサン・ジュリオ島などを辿りはじめ、そこで彼女が誰にも言えずに封印していた過去を、エドが密かに調べていたことを知るが―。
「ある天文学者の恋文」公式HPより


映画の主題は、愛は命が尽きた後もなお人の心を照らし続けることができるか - というものだ。何億光年も前に消滅した星の光がいま地上の我々に届くように。僕も人生の折り返し地点をとうに過ぎているので、他人事とは思えない。「博士の愛した数式」で知られる作家の小川洋子はこうコメントしている。

無限の愛とは何か。答えのない深淵な問いの奥底を、星の瞬きで照らしてくれる。

この秋、ロマンチックな気分になりたいひとに、絶対お勧めの映画である。

さて、季節は巡り名実ともに2016年度も下期入り、10月相場のスタートだが、10月は3日新甫でのスタートとなる。「3日新甫は荒れる」というが果たしてどうか。鍵は、米国の経済指標、なかでも全米サプライマネジメント協会が発表する9月のISM景況感指数だ。3日に製造業の、5日に非製造業の景況感指数が発表される。

9月の相場を振り返るとこの2つのISM景況感指数の下振れで円高の流れが決定づけられたと言っても過言ではない。事実、製造業指数発表直前はドル円は104円をつけていた。それが製造業指数が出た途端に103円10銭台まで急落。市場の反応という意味では非製造業指数のインパクトの方が大きかった。市場予想を大幅に下回るネガティブサプライズで、発表直前の103円半ばから102円ぎりぎりまで、約1円50銭の急落となった。ざっくり言えばISMで104円から102円まで2円ほど円高にもっていかれた感覚だ。

今回、ISMは製造業、非製造業とも持ち直しが予想されている。これらが改善すれば、この材料で下げた2円分を戻し、103円台前半までの円安はあり得るだろう。そうなればずっとドル円の頭を抑えてきた75日移動平均を抜き、一目均衡表の雲の中に入る。これまでとは景色が違ってくる。日本株の大きな支援材料になるだろう。

現在、ドル円の75日移動平均は102円50銭程度。ここを明確にブレイクすれば年初来のトレンドが変わる可能性がある。上値は75日線に抑えられずっと右肩下がりできたが、下値は100円が節目となってサポートとなっている。このペナント型の保ち合いを放れる時機は煮詰まりつつある。このタイミングで米国の経済指標が改善すれば、一気に上に放れてくるだろう。

今の25日線と一目均衡表の雲の下限がともに101円94銭だから、米国の経済指標が改善した場合、ドル円は雲のなかに入ってくるだろう。10月上旬までは雲の上限は103円台前半。9月にISM統計で下げた2円を取り戻すことができるなら、今年初めて雲の上に抜け出せる。

週初は日銀短観も発表されるが、これほど市場で話題にされないのも珍しいくらい今回は注目度が低い。それより相場の材料としては、ノーベル賞の発表が始まることに関連してバイオ関連が投資テーマとなるかもしれない。そのほか小売業の決算発表がある。5日はABCマート(2670)、良品計画(7453)、イオン(8267)の決算が、6日には7&iHD(3382)の決算が発表される。

何億光年もかなたの星は、もう存在しないかもしれない。僕たちが今見ている星の輝きは何億年も前に放たれた光。それと同じように、今僕らが見ている「板」にある株価や注文は、もう存在していないかもしれない。僕らが知覚した瞬間にはもうHFT(高速高頻度取引)のファンドがかっさらっていってしまうだろう。

しかし、幸いなことに - と言っていいかどうかわからないが - HFTによる「先回り買い」が不公平な問題を引き起こしかねないのは、ダークプールが乱立する米国市場特有の問題である。日本はまだ事実上、JPX単独市場への市場集中取引が圧倒的主流であり、米国のような問題は起こらない。

そもそも我々の視覚には限界がある。株式の取引だって天文学の研究だって、観ることから始まるのは確かだが、本当の極みはその先にある。「星」に関する言葉では、この右に出る言葉はないだろう。

ものごとはね、心で見なくてはよく見えない。いちばんたいせつなことは、目に見えない。
サン・テグジュペリ 『星の王子さま』



広木 隆
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