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債券バブルに警鐘?

by 広木 隆

毎週火曜日は日テレNEWS 24に出演、東証アローズから寄り付きの解説をしている。いつもは閑散としている東証のロビー(左下)が、今日は朝から多くの人でごった返していた。今日はJR九州の新規上場日である。JR九州の初値は3100円がついた。公開価格2600円を約2割上回る上々の滑り出しとなった。

さて、月曜日のオンラインセミナーで回答できなかった質問をブログで取り上げることにしたが、きのうは悪口を書き込まれて腹が立ったので、それについてブログで展開して、ああ、すっきりした、というところで時間切れ(酒を飲む時間)になってしまった。なので、今日は昨日のセミナーでいただいた質問に答えることにする。と、言っても、先週やってみてわかったが、たくさんの質問をブログで取り上げるのは非常に大変である。似たような質問はセミナーで答えているので、少し違う角度からの質問をここでは取り上げてみたい。それは債券バブルに関するお問い合わせである。

昨日のテレビ東京ニュースモーニングサテライトで債券バブルがはじける危険に米国の投資家が警鐘を鳴らすという特集が放映された。それを視たセミナー参加者から、どういうことなのか、と質問をいただいた。債券バブルが終わったあとの投資戦略は?という質問を別の方からも頂戴した。このトピックはそれなり個人投資家の興味をひく話題なのだと思った。

しかし、その一方で、債券は個人投資家にはなじみの薄い資産クラスなのだとも改めて認識した。質問されたおふたりとも「債権」と書かれていたからである。「債券」を「債権」と書いても、あながち間違いではない。事実、岩波文庫のケインズ『雇用、利子および貨幣の一般理論』(間宮陽介訳)では、「債券」と「債権」の区別は曖昧である。これについて述べると長くなるので、この話題はまた次回にしよう。兎に角、言いたいことは、債券市場は機関投資家の専売特許だということだ。だから、個人投資家にはなじみがない。なじみがない、というよりわからないので、テレビで「債券バブルがはじける」などと言われると過剰に反応してしまうのかもしれない。

モーサテの特集は、「アメリカ投資家が債券バブルに警鐘」というタイトル。番組いわく、「世界的な超低金利時代が続く中、アメリカの一部投資家の間でささやかれているのが、社債をはじめとする債券市場のバブルです。今回、世界で20兆円を運用する資産運用会社の責任者がテレビ東京のインタビューに答え、債券バブルに警鐘を鳴らしました」というものだ。登場したのはロサンジェルスに本拠を置くTCWの債券運用責任者ジェリー・カジル氏だ。カジル氏は今、債券バブルが崩壊する予兆を感じ取っていると語る。

信用格付けが低い債券価格までがカネ余りを背景に上昇している。それを「債券バブル」と呼んでいるのだ。番組で映し出されていたのとまったく同じチャートを表示しよう。iShares の高利回り社債ETFのチャートだ。確かに足元まで一本調子に右肩上がりが続いている。

カジル氏は、投資マネーの逆流がいつ起きるかはわからないものの、債券相場のサイクルを考えた場合、相場は末期にあるというのである。しかし、証券価格というものは、「価格の絶対値」だけをもってして割高割安を判断できない。なんらかの尺度で測った相対価値というバリュエーションが必要だ。債券の場合は、安全資産とされる国債との利回り格差(スプレッド)を用いるのが一般的である。

上のグラフはハイイールド債利回りの米国債対比のスプレッドである。スプレッドの縮小がずっと続いてきたことがわかる。これを見れば、世界的な金利低下(債券価格の上昇)が続く中にあっても特にハイイールド債の割高感が指摘されるのも無理はない。

しかし利回り低下の起点となったのは2月につけた800bpsを超えるスプレッドからである。そこまでスプレッドが拡大すればハイイールド債は目をつぶって買われる。その勢いが半年余り続いてきただけとも言える。

債券運用の老舗、ロード・アベット社のゼーン・ブラウン氏によれば、スプレッドが800bps を超す水準に達するのは極めて異例である。スプレッドが 800ps を上回った事例は過去 30 年で数回しかなく、しかもそれらはかなり短期間だった。

ゼーン・ブラウン氏はこう述べる。「スプレッドが拡大した局面、とりわけ 800bps 地点を上回った局面後のハイイールド市場のパフォーマンスについて、歴史は我々に何を教えてくれているのでしょうか。実際のところ、高水準に達してから 1 年、2 年、3 年、4 年、5 年後までの各期間においてハイイールド市場は歴
史的にも力強いリターンを生んできました」

カジル氏は、債券相場のサイクルを考えた場合、相場は末期にあるというが、前回のサイクルではハイイールド債のスプレッドは2%まで縮んだ。

現在の4%というのは過去の長期平均5%を少し下回るだけである。

ざっくり言って、この程度のハイイールド債の買われ方はバブルでもなんでもない。過去に何度も経験したことである。ビデオに映ったカジル氏は非常に端正な顔立ち、イケメンである。そして若い。おそらく40歳前後ではないか。それに対してゼーン・ブラウン氏は -  何歳かは知らないが、僕が初めて会った四半世紀前から - 債券のベテランだった。「債券相場のサイクル」なんて話になれば、カジル氏より、ゼーンに分があると思う。来月、NYに行く。ゼーンと久しぶりに会って「債券相場のバブル」について話してこようと思う。

結論から言えば、ハイイールド債はもう少し買われる余地がある。但し、その後は急落するかもしれない。しかし、そのような激しい値動きがハイイールド債、すなわちジャンク債のネイチャー(本質)である。そして、その急落が800bpsを超えるスプレッドまでいくなら、目をつぶって買いである。ジャンク債のバブル崩壊?もしもあるなら、心待ちにしたいイベントだ。


広木 隆
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