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今週の相場展望

by 広木 隆

この週末は金曜日から足掛け3日にわたって軽井沢で開催された日米金融シンポジウムに参加した。テーマは「21世紀の金融システムの構築について:日米の課題」である。

日本と米国で一年ごとに交互に開催され今年で19回目を数える。参加者は監督省庁のトップクラス、セントラルバンカー(含むOB)、銀行、証券、保険、運用会社の幹部、コンサルタルント、弁護士、ヘッジファンド、経済学者など多彩な顔ぶれだが、参加者名簿を見ると尻込みしたくなる、そうそうたるメンバーだ。

国際会議だから当然だが、プログラムはすべて英語でおこなわれる。スモールグループに分かれてのディスカッションもある。それをこのメンバー相手におこなうのかと思って気後れしていた。

軽井沢に着いた時は冷たい雨。場違いなところに来ているような気がしてシンポジウムが始まる前から早くも帰りたくなった。

それでも始まってしまえば、なんとかなるものである。トピックが金融に関することなので、下手な英語でも話すことはできる。ディスカッションが始まれば、黙っていられない性分なので積極的に発言した。今さらながら思うけど、こういう会議では「うまく話す」ことよりも「意味のあることを話す」ほうがずっと大切である。いや、それはこういう会議に限った話ではないだろう。そういう想いに至れば、英語力の巧拙、学歴の低さなどのコンプレックスは雲散霧消し、2日目のディナーのころにはすっかりシンポジウムを楽しんでいた。着いた時の雨は上がり、2日目は良い天気に。秋の静謐な空気と軽井沢の紅葉も心を軽やかにしてくれた。

自由時間にはホテルに隣接するショッピングモールで買い物をしたり、信州の新蕎麦を楽しんだり。終わってみれば非常に充実した3日間であった。

さて、今週の相場展望だが、今週は日米で金融政策会合がある。10月31日~11月1日に日銀金融政策決定会合が、11月1~2 日には連邦公開市場委員会(FOMC)が開かれる。しかし、市場の関心は高くない。今回はどちらも現状維持というのがコンセンサスで、おそらくその通りになるだろう。

日銀の黒田総裁は21日に開かれた国会の衆院財務金融委員会で、長短金利の誘導目標の引き下げは現時点で不要との考えを示し、追加緩和の見送りを示唆した。これまでの「サプライズ演出型」から「市場との対話重視」にスタンスを変えたと受け止められている。米国のFOMCも、大統領選を1週間後に控えたこの時期に利上げに動くとは考えられない。ましてやクリントン候補の私用メール問題を巡って米連邦捜査局(FBI)が捜査を再開すると伝わり市場が再び動揺しかかっている。この問題の全容解明にはおそらく時間がかかる。日米金融当局は静観するしかないだろう。

国内では決算発表が佳境を迎えている。今週は製薬、電機、電子部品、自動車、商社などの主力企業の決算発表が相次ぐ。為替の円安基調も支えとなって、これまでのところは円高による業績の悪化は織り込み済みという市場の反応だ。先週のストラテジーレポートでも指摘したが、アナリストによる業績予想の上方修正から下方修正を引いて計算するリビジョンインデックスがプラスに転じてきた。この上期が企業業績の底となりすでに最悪期は脱したとの認識が広がっている。

今週は月末月初にあたり重要な経済指標の発表が相次ぐ。日本では31日に鉱工業生産と、日銀会合後に発表される経済・物価情勢の展望(展望レポート)が注目。現在「17年度中」としている物価2%達成時期の先送りが示されるだろう。米国では31日にコアPCEデフレータ、1日はISM製造業景況感指数、3日はISM非製造業景況感指数、4日には雇用統計が発表される。NFPの伸びは3ヶ月連続で鈍化しているが、足元の景況感の持ち直しから反動で大きな伸びとなってもおかしくないと思う。果たしてどうだろうか。中国では1日に10月政府版製造業PMI、10月財新製造業PMIが発表される。

波乱材料は原油相場の動向か。28 日にウイーンで開かれた石油輸出国機構(OPEC) の事務レベルの打ち合わせで、イラクとイランが減産の際の基 準となる生産データを巡って対立し協議がまとまらなかった。OPECが8年ぶりの原油減産で合意してから1カ月。11月末のOPEC総会で最終的な協調減産に至るのか再び暗雲が垂れ込めてきた。

今週はそうした海外環境の不透明感から神経質な展開となろう。上述したクリントン氏のメール問題でリスク回避の流れが強まれば、105円を超える円安となったドル円相場も一旦円高へ巻き戻るかもしれない。堅調に上げてきた日本株も押しが入ってもおかしくない時期なので、月初の重要指標発表を前にポジション調整の動きとなるだろう。

木曜日に文化の日の祝日、翌金曜の夜が米雇用統計なので週前半から動きにくいムードである。10月もあと1日残すのみとなったが、振り返れば日経平均は9月末からこのひと月で1000円上昇した。今週は場合によっては先週上昇した分を吐き出すような調整もあるかもしれない。予想レンジは17,200~17,600円。上値では4月高値の17,613円が強く意識されるだろう。

ドル円は一目均衡表の雲の上限103円50銭程度が下値の目途か。11月4日から一目均衡表の雲の上限が急速に切り下がり、11月15日に雲のねじれが起こることが先行き気懸りな点である。米国大統領選の1週間後である。ここからはきめ細かな対応で相場に臨みたい。


広木 隆
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