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今週の相場展望

by 広木 隆

今週の相場は米国大統領選の結果次第。それに尽きる。

今年は日本のプロ野球日本シリーズも盛り上がったが、本場アメリカ大リーグのワールドシリーズも大変熱い闘いだった。第7戦の延長10回の死闘を制し、カブスが108年ぶりにワールドシリーズ・チャンピオンの栄冠に輝いた。

カブスの優勝はマーケット的にもウェルカムだ。ナショナルリーグのチームがワールドシリーズを制すると、大統領選挙では民主党が勝利、アメリカンリーグでは共和党が勝つというジンクスがあるからだ。カブス=ナショナルリーグ=民主党=ヒラリー・クリントンだから、このジンクス通りいけば、「トランプ大統領誕生⇒市場の大混乱」というシナリオは避けられるのだが…。

拮抗した選挙戦の鍵を握るのは、「スイング・ステート」である。それぞれの党のシンボルカラー(民主党=青、共和党=赤)から、伝統的に民主党が強い州を「ブルー・ステート」、共和党が強い州を「レッド・ステート」という。この意味でもカブスの優勝は縁起が良い。カブスのチームカラーは「カブス・ブルー」と言われる青。ユニフォームには赤も使われているが、ブルーが圧倒している。これは「ブルー・ステート」優位の象徴ではないか。


「ブルー・ステート」「レッド・ステート」、このどちらでもない州は「スイング・ステート」と呼ばれ、選挙のたびに民主、共和のいずれかに振れてきた。

順調に開票が進めば、日本時間で9日昼~午後には大勢が判明する見込みだが、まれにみる接戦だけに最終結果の判明は東京市場の取引終了後、日本時間の夕方~夜になる可能性もある。だが東部の開票結果は前場のうちにある程度わかる。

日本時間9日の最初にして最大の注目は「スイング・ステート」の大票田、フロリダとオハイオだ。フロリダ州は人口がおよそ2000万人と全米で3番目に多く、29人の選挙人が割り当てられ、大統領選挙の勝敗を左右する重要州。中東部に位置するオハイオ州は、全米で7番目に多い18人の選挙人が割り当てられている。人種の構成や産業の分布が全米の平均値に近いことから、「アメリカの縮図」とも呼ばれ、「オハイオを落とすと勝てない」というジンクスもある。フロリダが日本時間9時に、オハイオが9時半に投票が締め切られる。情勢は10時過ぎ頃から伝わるだろう。その結果次第で東京市場は前場から大荒れになる可能性もある。

フロリダ、オハイオにバージニアを加えたスイング・ステート3州の情勢が9日の東京時間前半戦の焦点だ。昼過ぎからはコロラド、ネバダなどの情勢が注目される。

このように9日は日中の動きは激しくなることが予想される。しかし、東京の大引けまでに最終結果がわからない可能性が高い。なので、変動性は高まるがBREXITのような「決定的なショック安」は、9日の東京市場取引時間中には発生しないというのをメインシナリオとする。

サブシナリオは、早い段階でフロリダ、オハイオ、バージニアの「スイング・ステート」でトランプ氏が勝利すること。そうなればその後の逆転の目は相当薄くなるので、東京市場は「トランプ大統領誕生」で反応する。すなわち大幅安になるだろう。6月のBREXITでは1300円近く下げた。今回も1000円幅の下落となってもおかしくはない。その場合、ドル円もあっさり100円を割るだろう。95円程度まで円高が進むかもしれない。

ただし、「トランプ大統領誕生」で市場が急落したら、そこは絶好の買い場となるだろう。「トランプ大統領誕生」による急落は、ショック安や狼狽売りで、実体経済の悪化を反映したものではないからだ。そうしたセンチメントの急変による安値はミスプライスとなることが多く、その後の修正が期待できる。これはBREXITで学習済みだろう。

海外時間に結果判明が持ち越される場合、米国株の反応が鍵だが、S&P500がすでに36年ぶりの9日続落となるなど、すでに相当程度トランプ・リスクを織り込んできただけに、実際に「トランプ大統領誕生」となっても、米国株の下げは限定的かもしれない。

ヒラリー・クリントン氏が勝利する場合、これまでの下げに対する買戻しは入る。しかし、クリントン氏が勝ってもメール問題はくすぶり続けることから、一気に大幅高かつその後も継続的な戻り歩調となるかは疑問である。

カブスは107年間のスランプに終止符を打って栄冠を手にした。それに比べれば短いが、株式市場も低迷に終止符を早く打ってほしいものだ。ちなみにカブスの長期低迷は「山羊の呪い」だといわれる。1945年のワールドシリーズをタイガーズと争っていたとき、ファンがペットの山羊を球場に連れて入ろうとしたのを止められて激怒し、「ヤギの入場が許されるまで、カブスは2度とワールドシリーズに勝てない」と放言した。この言葉の通り、カブスはそれ以降長期低迷を抜け出せなかった。これが「ビリー・ゴート(山羊)の呪い」である。

今回、ワールドシリーズ・チャンピオンになったことで「山羊の呪いが解けた」わけだ。と、いうことは「ジンクスが破られた」ということだから、ナ・リーグ=民主党、ア・リーグ=共和党のジンクスも効かない?いやいや、考えないことにしよう。


広木 隆
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