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限りなく透明に近い「の・ようなもの」

by 広木 隆

古い話で恐縮だが5年前のレポートでこんなことを書いている。

S&P500のローソク足をみると、昨日の陰線が前日の陽線を包み込む「包み足」のようになっている。酒田五法では転換点とされるが、これは完全な「包み足」ではない。「包み足」は図のように「ヒゲ」も含んで完全に包み込むものを指す。だからこれは「包み足の・ようなもの」である(注:「の・ようなもの」は落語界を舞台にした青春群像を描く日本映画。1981年、森田芳光監督の事実上のデビュー作)。
「の・ようなもの」であっても、その形状が示す意味は同じであろう。上昇トレンドに乗って前日終値よりも高く始まるが、戻り売りも厚く下げに転じる。前日の寄り付きを下回る水準で引けることの意味は、前日の地合いの全否定となる。
しかし、あくまでも「の・よう なもの」であるので、そこまで強いトレンド転換のサインとは捉えないほうがよい。5月初めの高値から8月安値までの下げ幅に対する半値戻しを目前にしての“あや戻し”であり、雇用統計を控えて、一旦「ギアをニュートラルに入れた」というところだろう。
2011.9.2 「米国株式市場スナップショット」

今さら5年も前の文章を引っ張り出してきたのは、今日の日経新聞のコラム『大機小機』のタイトルが、「ヘリマネのようなもの」だったからだ。コラムの筆者<和悦>氏は、<日銀がお札をばらまくように財政資金を供給する「ヘリコプターマネー」の期待が、市場では強かった>から、<日銀の国債保有期間を一段と長くして、財政と金融の二人三脚を印象づけること>が次回の追加緩和のメニューにのぼるだろうと予想する。そして、それを「ヘリコプターマネーのようなもの」と呼んでいる。

その点についてはまったく異論はない。まったくないどころか僕の主張そのものだ。(例えば7/29付けのエントリーご参照 https://edit.goat.at/#/posts/3rcW6SfT)

冒頭の「包み足の・ようなもの」で述べた通り、<「の・ようなもの」であっても、その形状が示す意味は同じ>だが、<あくまでも「の・よう なもの」であるので、そこまで強いトレンド転換のサインとは捉えないほうがよい>のである。「真正のヘリマネ」なんて誰も信じていない。肝は、いかに「の・ようなもの」を、しらっと出すかである。しらっと出して、あとは勝手に市場に躍らせればよい。それで効果が得られるならば、利用できるものは利用した方がよい。

ちなみに、ヘリマネ議論は昔からあるが、ヘリマネを意識した市場の反応を指摘したのは僕がかなり早い部類だったと思う。7/11のレポートで書いている。タイトルは「限りなくヘリマネに近い政策期待」。

つまり、<和悦>氏は森田芳光に倣い、僕は村上龍に倣ったということだ。

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広木 隆
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