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標語

by 広木 隆

世間はお盆休みに突入。電車も都内の道路も空いている。飛び石連休の狭間の金曜日とあって、出勤している僕もリラックスモード。銀行時代の先輩ご夫妻とランチをご一緒した。場所は西麻布の老舗イタリアン、アルポルト。片岡護シェフ自らホールに出てパスタの皿をサーブしていただき恐縮した。巨匠と呼ばれる地位にあっても、おごらず謙虚な姿勢には頭が下がる思いがした。

先輩ご夫妻と僕は某都市銀行でともに働いた経験を有する。その都銀は別の都銀と長信銀のひとつと3行合併を経ていまはメガバンクの一角を形成している。

「彼らはさ、表向きは<One ○○○>なんて標榜しているけど、全然ひとつになってないよな。それを如実に示すのが、舞台裏さ」

「舞台裏ってなんですか?」

「出向先だよ。俺の同期の年次だとほぼ全員、出向・転籍している。彼らの行き場を見ると、見事に旧○○銀行系列。ほかの2行も同じだって。表向きはひとつに統合されたように見せて、裏では旧態依然の3行の体質が残っている」

「なるほどね。<One ○○○>って標語が空しく聞こえますね」

「企業の標語っていうのは、『そうじゃない』ことを表すものだよ、たいていの場合ね」

「標語と反対が実情なんですね」

「俺たちが入ったころの○○銀行の標語、覚えてる?」

「なんでしたっけ?」

「オープン&リベラル」

「確かに、真逆でしたね...」

当時はやたらと、「自由闊達な行風」と謳われていた。確かに幸せな時代であったのだ。銀行の名前は変わったが、銀行のDNAは受け継がれているだろう。今も残る当時の銀行員が、幸せかどうかは知らないが。

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広木 隆
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