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問われる資本主義

by 広木 隆

日経新聞「経済教室」で昨日から始まったシリーズ『問われる資本主義』の第二回目は、堂目卓生・大阪大学教授。アダム・スミスの「道徳感情論」を引きながら、共感・利他の精神が鍵だと説く。

おっしゃる通りだが、それはチェコの経済学者トーマス・セドラチェクが『善と悪の経済学』で示した視座そのものである。セドラチェクも出ていたNHKの番組『欲望の資本主義 ~ルールが変わるとき』を思い出した。Youtube にアップされているのでぜひご覧になることをお勧めする。非常に良質なプログラムである。

『欲望の資本主義 ~ルールが変わるとき』のなかで、ジョセフ・スティグリッツは、市場経済のルールが書き換えられ、ショートターミズムが横行し、不平等が拡大したことが経済の効率性を阻害しているという。そして、これからのルールは繁栄を分かち合いながら成長し、より公平な分配をうながすものでないといけないと述べている。今日の「経済教室」に通じるところがあると思う。

『問われる資本主義』第一回目の昨日は岩井克人先生だった。僕は『ヴェニスの商人の資本論』を読んで以来の岩井先生の大ファンであり、偉大な経済学者に対してものを申すなど大変僭越であるが、昨日の「経済教室」に書かれていた「株主主権論の誤りを正せ」というのは、少々「言葉足らず」だろう。

岩井先生のご指摘は、米英型のコーポレート・ガバナンスの失敗であり、株主主権そのものを否定するものではないと思う。(株主主権論の定義が狭義に偏っている気がする)

米英の経営者が自己利益の追求に走り格差が拡大した結果が、トランプ旋風と英国のEU離脱派勝利だとして、先生はこういうのだ。「私は実は、これらの混乱が米英で起きたことに一条の希望の光を見出している」。

偉大な経済学者・岩井克人先生に対して大変僭越ながら、同じことを僕も書いている。

欧州は分裂に進んでしまうのか?根本的な問題が「下対上」すなわち「格差」であるならば救いはある。それが、「欧米」でなく、「英米」ということだ。ドイツをはじめ欧州の先進国や日本でも格差問題はあるが、英米ほど偏り方が突出していない。ともにアングロサクソンの国であるイギリスとアメリカは、シティとウォール街という2大金融エンジンを抱え、金融資本主義を推し進めることで成長してきた。その結果、異常に拡大した格差の果てに見えたものが、BREXITでありトランプ=サンダース現象ではないか。英米以外の国々の格差は英米ほど極端に拡大していない。今ならまだ手が打てるはずである。
6月27日【新潮流2.0】第5回「欧米か」

一昨日のブログで、<運用者はみんな「独自の指標」などというが、生き馬の目を抜く運用の世界でそう簡単にオリジナリティーが発揮できるわけはない>と書いたが、運用アイデアにせよ、経済についてのコメントにせよ、「独自の見解」「独自の主張」なんて、そうそうあるものではない。大変僭越ながら偉い経済学者の先生についても同じことがいえる。それが当たり前なのだ。外山滋比古という偉い先生もこういっている。

第一次的創造はクリエイションである。これを加工して新しい価値に昇華させるのは、メタ・クリエイションである。思考についても、この創造とメタ・創造の次元が存在する。(中略)“知のエディターシップ”、言いかえると、頭の中のカクテルを作るには、自分自身がどれくらい独創的であるかはさして問題でない。もっている知識をいかなる組み合わせで、どういう順序に並べるかが緊要事となるのである。
『思考の整理学』
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広木 隆
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