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マチネの終わりに

by 広木 隆

前回のブログで、東京ジャズフェスティバルの昼の部に行ったと書いた。昼公演のことを「マチネ」という(夜の公演は「ソワレ」)。ただし、これはクラッシックやミュージカルなどの舞台・演劇用語で、ジャズのコンサートをそのようには呼ばないだろうと思う。

で、平野啓一郎『マチネの終わりに』である。僕がギタリストの端くれであることは前回も触れたが、この本を手に取って読んだのは、主人公のひとりがギタリストだから興味をもったというのもあるけれど、本の宣伝文句に惹かれたところが大きい。

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感情移入するな、というほうが無理である。この点については支障もあるので深く述べないが、完全に主人公になりきって読了した。目下、バッハの無伴奏チェロ曲を猛練習中である。

ここから先は、昨日のメールマガジン「新潮流」のコラムに書いたことと重なるが、ご容赦いただきたい。とにかく含蓄のある言葉が満載である。例えば、主人公が「未来は常に過去を変えている」と話す場面。

最初に提示された主題の行方を最後まで見届けた時、振り返ってそこに、どんな風景が広がっているのか? (中略)展開を通じて、そうか、あの主題にはこんなポテンシャルがあったのかと気がつく。そうすると、もうそのテーマは、最初と同じようには聞こえない。花の姿を知らないまま眺めた蕾は、知ってからは、振り返った記憶の中で、もう同じ蕾じゃない。音楽は、未来に向かって一直線に前進するだけじゃなくて、絶えずこんなふうに、過去に向かっても広がっていく。

マイナス金利政策についても同じことが言える。導入された当時からこれまでは、マイナス金利の負の側面ばかりが目立った。ところが昨今の状況ではマイナス金利政策の捉え方が違う(はずである)。市場の一部で、日銀は次回会合で国債購入ペースの柔軟化とセットでマイナス金利の深堀りを打ち出すのではという見方が出ているが、そうした見方を背景に長期金利は上昇を続けてきた。今日の取引で10年債利回りはマイナス0.001%まで上昇する場面があった。200日移動平均を上抜けてきた。もう少しでプラス圏に浮上する手前まできている。

このように長期金利が上昇し、イールドカーブがスティープ化する状況になればマイナス金利が拡大されても銀行株が売られることは、もうないだろう。事実、過去1カ月の東証33業種別パフォーマンスのトップは銀行業である。

「最初に提示された主題の行方を最後まで見届けた時、振り返ってそこに、どんな風景が広がっているのか?展開を通じて、そうか、あの主題にはこんなポテンシャルがあったのかと気がつく」と主人公・蒔野はいう。最初に提示されたときにはさんざんの評判だったマイナス金利政策も、展開次第ではこんなポテンシャルがあったと今になっては多くの市場関係者が思っていることだろう。

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広木 隆
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