Dance with Market

金利と株価の関係

by 広木 隆

100人中100人が予想したであろう通り、今日の東京株式市場は大幅安となったが、ここまで下げるとは僕は思わなかった。

日経平均は午後に入り下げ幅を拡大し、一時364円(2.1%)安まで売り込まれた。394ドル(2.1%)安となったNYダウ平均と同じ下落率を記録したことになる。無論、マーケットの厚みが違うので日本株のほうがボラタイルで振幅が大きくなるのは仕方ない。それでも日本と米国とでは状況が多々異なるのに、判で押したようなミラー相場。毎度のことながら情けなくなる。

教科書的には金利上昇は株価を押し下げる方向に作用する。米国株は企業業績が伸びないのに、低金利によってバリュエーションが拡大し株価が押し上げられてきただけに、金利が上がれば株価が下がるのは至極当然である。

金利と株価が教科書通りにきれいな逆相関になっている米国株に対して、日本株は長期金利と株価はほぼ連動して動いてきた。10年債までマイナスに沈む超低金利にもかかわらず、バリュエーションは一向に上がらなかった。マイナス金利政策をその最たるものとして、日銀の金融政策に対する市場のネガティブな評価の表れであろう。

だからこそ「総括的検証」を巡って金融政策のフレームワークが見直されるとの思惑で、長期金利が上昇したこの過去1カ月余り、日本株も長期金利の上昇と歩を同一にして上昇してきたのであった。日経平均と10年債利回りが同時に200日移動平均を上回ったのは象徴的である。

今日の全面安商状のなか、生保株が堅調だったように、イールドカーブのスティープ化を受けてこれまで売られていた金融株が買い戻され相場をけん引した面も大きい。TOPIXを対象としたファクターリターンを見ると、7月以降「金利感応度」のファクターリターンはプラスに転じている。金利上昇は日本株にとってポジティブ材料になっている。

長期金利と株価の連動。この関係は、今日のような米国株安を映したミラー相場においても維持されている。売り先行で始まった日経平均は朝方はまだマイルドな下げ幅にとどまっていた。しかし、その後、10年債利回りが低下すると、それを追いかけるかのように先物に大きな売りが出て下げ足を速めていった。ところが昼から金利が上昇に転じると急速に下げ渋る。

株安でリスク回避となって国債が買われたのではない。オレンジのライン、すなわち金利の動きが株価に先行して動いていることに注意してほしい。金利を見て株価が反応しているということだ。

米国と日本では - 当たり前だが - 状況がいろいろ異なる。その最たるものは金利に対する株価の反応だ。日本株にとって金利上昇はポジティブ材料だ。今後、日米欧の金融政策を巡る思惑で長期金利に上昇圧力がかかりやすい局面がくるとすれば、日本株は相対的にアドバンテージを享受できる。欧米株が売られた場合の受け皿にさえなり得ると思う。(教科書とは違う市場原理で相場が動くというのは、なんとも情けないのだけれど。)

上述したのは楽観シナリオである。悲観シナリオの要因は、北朝鮮の核実験による地政学リスク、世界株安でリスク回避の円高となるケース、ヒラリー・クリントンの健康問題、挙げればきりがない。まずは今晩のNY市場をみてから、またアップデートしたい。

ちなみに、先週末の鹿児島のセミナーで、株価と金利の基本的関係について、バリュエーション・モデルの基礎から解説した。少し難しいかと思ったが、聴衆の満足度は高かったようだ。僕はまだ直接目にしていないが、好評価のフィードバックが寄せられているとのことだ。それは無論、僕一人の評価ではなくセミナー全体に対する評価であり、すべての登壇者・スタッフ全員の功績であることは言うまでもない。

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