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雨降って地固まるか?

by 広木 隆

トランプ米大統領が打ち出した難民や一部の国からの米国入国を制限する大統領令に対する反発が高まり全米で抗議活動がエスカレートしている。僕は、トランプ氏のスピード感や有言実行のスタンスなど、一部評価していた部分もあったが、さすがにこれはいただけない。

それでも希望は2つあった。ひとつは、トランプ氏はビジネスマンだから、相手(=この場合は世界・社会)の反応を見て柔軟に軌道修正できる人物だろうと思っていた。もうひとつの希望は、早い段階で司法から大統領令は違憲であるという声があがっていたことだ。それによってトランプ(政権)が軌道修正を行えば、アメリカは法治国家として機能している証になる。三権分立のシステムがちゃんと機能しているので、たとえ暴君のような大統領でも、その行政執行には司法が牽制・抑制を果たす。それを明らかにする良い機会だと思っていた。

ところがトランプ大統領はサリー・イエーツ司法長官代行を解任した。イエーツ氏は大統領令を支持しないよう司法省に指示したからだ。イエーツ氏はオバマ前政権時代に副長官に就いた人物で、トランプ氏が指名したジェフ・セッションズ氏が司法長官に正式就任するまでの代行である。だから、もともと切りやすいというところはあったのだろう。しかし「代行」だろうとも仮にも「三権」の(今現在は)長に対して、You are fired !(お前はクビだ!)-トランプ氏のテレビ番組のキメ台詞- というのはやり過ぎである。取引時間中にこの報道が伝わった東京市場では円高・株安の流れが加速した。

しかし、ここにきて新たな希望が生まれてきた。それは企業がトランプに対して反旗を翻していることだ。しかも、ゴールドマン・サックスやフォード・モーター、ゼネラル・エレクトリック(GE)など、いかにも「トランプ政権寄り」と思われる企業が、である。

企業だけではない。ワシントン州政府は、大統領令は違法だとして、トランプ大統領と政権幹部、国土安全保障省をシアトル連邦地裁に提訴した。

民間企業や州政府、自治体がダイバーシティの重要性とその擁護を改めて宣言している。言語道断の内向き政策の発動が、却って米国内の融和を促進するきっかけになりはしないか。現段階では、これをもって「雨降って地固まる」というのは楽観に過ぎるかもしれないが。

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広木 隆
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