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読みは当たったが賭けには負けた

by 広木 隆

「ついてなかったな」

それがFOMCの結果を目にした僕の感想である。

スティーブ・マックィーン主演(共演はフェイ・ダナウェイ)の映画『華麗なる賭け』のラストの台詞(字幕版)は、

「賭けには勝ったが、愛には負けた。」

その伝で言うなら、今回の僕の推奨は、

「読みは当たったが、賭けには負けた」というところであろう。

前回のブログではFOMCについて以下のように述べた。

ドットチャートに変化はあっても、あくまで中央値が示唆する今年の利上げ回数は3回にとどまる。これがメインシナリオだろう。4回の利上げを見込む向きも増えているが、コンセンサスを形成するには至っていない。

それを受けた市場の反応については、

メインシナリオ通りなら失望売りが出かねない。しかし、そもそも期待が高くない。ドル円は114円台のままである。だから失望売りも限定的だろう。

オランダの議会選についてはこう語った。

<自由党勝利の確率は低いけど、それが起きた時の市場の反応は大きくマイナス、その逆のケースでは相場はほぼ横バイだろう。>

「今週のマーケット展望」でも、FOMCのメインシナリオは政策金利の見通しは維持されるとし、その場合、失望でドルは売られ円高に振れるかもしれないと書いた。オランダ議会選挙のメインシナリオは現連立与党の自由民主党が第一党となり、自由党は野党にとどまるというものとした。そのうえで今週の展望として、「結局、重要イベントが多いが、いずれも穏当に通過し、終わってみれば前週とあまり大きく変わらない水準で週末を迎えることになるのではないか」と書いた。本稿執筆現在(14時)日経平均は1万9500円台を維持している。ほぼ予想通りの結果になったとしてよいだろう。

だがしかし、僕の推奨は、「FOMC前に買いで入って、オランダ選挙の結果が出る前に手仕舞え」というものだった。その通りにトレードしていたら失敗である。それが、冒頭「ついてなかったな」ということだ。

勝つための確率思考

東京大学理学部を卒業し、現在プロのポーカー師として活躍する木原直哉氏はこう述べている。

「運がなくて負けたことについては悔しくありません。残念だ、仕方がないなと思うだけです。」
(『運と実力の間』)
「まともなポーカープレーヤーであれば、というか確率に親しんでいる人なら、五分五分の勝負のときに3勝7敗になっても、7勝3敗でも、もちろん5勝5敗でも5勝4敗1引き分けでも、不思議には思いません。五分五分の確率で10回しか試行していないのですから、どれもおかしいことでなく、その場の運・不運に過ぎません。」
(『勝つための確率思考』)

木原さんのギャンブルの定義は「期待値がマイナスなことにお金を賭けること」である。多くのプロにとってなぜポーカーがギャンブルではないかと言えば、期待値に従ってプレーしているからだという。プロは基本的に勝てそうにない勝負はしない。リスクが大きい割に、期待できるリターンが少なければ長期的に必ず損をするからだ。一方でリスクの割に期待できるリターンが大きければ決して躊躇しない。

僕の推奨理由がまさにそれだった。FOMCのメインシナリオが実現してもダウンサイドは限定的(例えば50円安程度)で、サブシナリオが実現すれば大幅なアップサイド(例えば400円高して2万円到達)がある。確率×リターンで期待値を合計すれば、「FOMCというイベントの期待値」はプラス(60%×▲50+40%×400=130)とはじいて、買いから入ることを勧めたのであった。

「もちろんその場の勝負が裏目に出ることはあります。しかし長い目で見れば、かならずプラスになることを知っているので、その場その場の結果にはこだわりません。」
(前掲書より)

ロバート・ルービンも同じことを言っている。

「ときとして間違った判断が成功に結び付くことがあれば、きわめて正しい判断が失敗に終わることもある。しかし、長い目で見れば、より深く考え抜いたうえでの意思決定は、全体としては望ましい結果につながり、結果そのものよりも、いかに検討を加えて意思決定が行われたかが評価されることになる」
(「ハーバード大学での講演」)

東大理系卒のプロ・ポーカー師も、敏腕トレーダーとして鳴らしゴールドマン・サックスの会長から米国の財務長官にまで上り詰めた男も、異口同音に同じことを言っている。つまり、確率を考えて勝負しろ、ということであり、期待値に従って勝負した結果が裏目に出ても、それは単に「ついてなかっただけ」と割り切るべきなのである。

木原さんはこうも述べている。

「運が良かったと後から振り返って思えるときに、きっちり運をつかみとって結果に結び付けることができるかどうか。そのために必要なのが実力で、これはしっかりトレーニングすることで伸ばすことができる能力です。ポーカーは運と実力が半々のゲームで、負けを運のせいにして逃げることもできます。しかし、半分はやはり実力がものをいうゲームでもあるので、常に実力を鍛えておかないといけないのです。」
(前掲書より)

投資について言えば、日ごろからの情報収集、その分析、意思決定のプロセス、そうしたものの鍛錬であろう。あえて言えば、最初に挙げた「情報収集」にそれほどの意味はない。「グランビルの法則」で有名なテクニカル・アナリスト、ジョセフ・グランビルは「ニュースは重要ではない。市場がニュースにどう反応するかが重要なのだ」と言っている。その意味でFOMC~オランダ選挙を終えた後の市場の反応は、株式市場については極めて当然と思うが、為替がこれだけ円高に振れているのは理解に苦しむ。

小幡績・慶應義塾大学准教授は自身のブログで、今回のFOMCの決定を受けて市場が円高で反応したことについて「驚きだ」と述べている。そして、市場というのは、なぜ事実をあえて曲げて解釈するのか、と問いかけ、2つの仮説を挙げている。 


仮説1 都合が良いから。
市場が乱高下したほうが取引チャンスが増えて都合が良い


仮説2 あほだから。

(出所:小幡績PhDの行動ファイナンス投資日記)

為替市場は、と条件付きで小幡先生の「仮説2」を支持したい。

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広木 隆
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