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円高・株安の本当の理由

by 広木 隆
27日の東京株式市場で日経平均株価は反落した。終値は前週末比276円94銭(1.44%)安の1万8985円59銭だった。心理的節目である1万9000円を下回ったのは2月9日以来、およそ1カ月半ぶり。トランプ米政権による政策運営の不透明感が高まり、投資家心理が悪化した。外国為替市場で円相場が1ドル=110円台前半まで円高・ドル安が進み、企業の輸出採算が目減りするとの警戒感も重荷となった。主力の大型株はほぼ全面安の展開だった。
(日本経済新聞・電子版)

前週末にトランプ米大統領は医療保険制度改革法(オバマケア)の代替法案を撤回した。それが週明けの東京市場で進んだ円高・株安の背景だと捉える向きが少なくない。トランプ大統領の政権運営に黄色信号が点ったとか、政策の不透明感が増したとか言われる。それはその通りだろう。だが、そのことと、足元の円高(とその円高が招いた株安)の理由とは関係がほとんどない。

足元で急速に円高が進んだ理由は、ものすごく直截的である。すなわち円の資金需要の高まりである。ほぼ同義だがそれを反映して円金利が急上昇した。

その背景は日銀の異次元緩和によって国債が極端な品不足となっていることだ。日銀は24日、約8年ぶりとなる国債売り現先オペを実施した。大規模な国債買い入れを背景に深刻化している民間金融機関の国債保有不足を受けたもので、レポ市場で国債の貸し手が特に少なくなる年度末に対応した。同時にTBの買いオペも見送った。突然『はしご』を外された形で、レポやLIBORなどの短期金利が急上昇した。ドル・円ベーシススワップ3カ月物は、日銀が対応策を発表した23日に一時マイナス23.5 bpsまで急激に縮小した。

年度末を控えて一段と円資金が取りづらくなるという思惑が円資金の手当て、すわわち円買いに走らせたのである。これはレパトリなどと同様に期末の特殊要因に過ぎない。過度な円高圧力も早晩和らぐだろう。

先週金曜日の米国市場でダウ平均は一時120ドル超下げた。採決直前になってトランプ米大統領とライアン下院議長が会見中と報じられ、代替法案の可決に不透明感が強まったからだ。ところが取引終了の約30分前に代替法案の採決が見送られると伝わると、ダウ平均はその報道を受けて下げ幅を急速に縮めた。オバマケアはわきに置いて、減税策など主要な経済政策の審議は進むと楽観的な観測が台頭したからだろう。株だけでなく、ドルも金利も上昇した。それが米国市場の(=インターナショナルな)反応であり、東京市場の反応は上述の通り、円独特の(=ドメスティックな)要因である。

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広木 隆
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