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今週のマーケット展望

by 広木 隆

今週も下値模索の展開が続くだろう。状況がまったく改善していないからだ。いや、むしろ悪化していると言える。これまでは日本企業の業績は好調、世界景気は米国を中心に改善、地政学リスクの高まりだけが不安要素だったが、ここにきて米国景気の陰りがいっそう色濃くでてきた

先週発表された小売売上高は前月比0.2%減。2月の数値が当初発表の0.1%増から0.3%減へ下方改定され、2カ月連続でマイナスとなった。自動車販売の不振が響いた。2月の0.3%減は1年近くぶりの大幅なマイナスだ。自動車とガソリン、建材、食品サービスを除いたコア売上高は前月比0.5%増と、前月のマイナスから持ち直したが、やはり2月分は0.1%増から0.2%減へ下方改定された。先日発表された個人消費支出の弱さと整合的であり、これらを考え合わせれば今年1-3月期の米国の個人消費は急ブレーキがかかりGDPの伸びを抑制する要因となるだろう。

CPIは前月比0.3%低下。食品とエネルギーを除くコアCPIは前月比0.1%低下と、2010年1月以降で初めてのマイナスとなった。

このように先週発表された小売売上高と消費者物価指数はどちらも冴えない結果となった。リーマン危機後、米国景気の回復局面はすでに8年が経過し異例の長さに達している。循環論的にはいつ景気拡大がピークアウトしてもおかしくない。トランプ政権による減税等は遅れることが濃厚であり、政策が発動されるまえに米国景気が息切れしてしまう恐れがある。このような状況では6月FOMCでの利上げも危うい状況だ。現在はまだ6月利上げを見込む向きが優勢なので、6月利上げなしに市場の見方が傾けば一段と円高が加速するだろう。

今週は、麻生財務相とペンス米副大統領による日米経済対話の初会合が18~19日に開かれる。今回の会合では、為替云々よりも通商協議の優先度が高いが、だからと言って円安材料があるわけでもない。

市場の重石は引き続き北朝鮮情勢だ。日本時間の16日午前、北朝鮮が弾道ミサイル1発を発射したが、直後に爆発し、失敗したと報じられている。折しも、15日は金日成(キム・イルソン)主席の生誕105年の記念式典が行われ、首都平壌(ピョンヤン)には外国メディアが招かれていた。NHKの取材班が滞在先のホテルから確認するかぎり、ホテルでは、ふだんどおり大勢の外国人観光客がバスに乗り込み市内見学に出る様子も見られたということだ。北朝鮮も事を構える意図はなく、これまで通りの「挑発」「威嚇」目的のミサイル発射だったのだろう。

だからこそ怖いのである。北のミサイル発射は失敗続きだが、無論、わざと失敗しているわけではないだろう。つまり制御不能になっている。であるなら、偶々(たまたま)成功して、本気で攻撃する意図がなくとも日本か韓国かもしくは朝鮮半島付近に展開する米軍に着弾しないとも限らない。いわゆる「暴発リスク」 - 偶発的な軍事衝突の可能性がある。

23日にはフランス大統領選の第一回目の投票日だ。ルペンVSマクロンで決戦投票に進めば市場には安心感が広がるかもしれないが、直近の世論調査ではメランション氏が急速に支持を伸ばしている。ルペンVSメランションとなった場合、ユーロが急落する恐れがある。極右か極左ではどっちに転んでもフランスのEU離脱の可能性を市場が危惧するからだ。いずれにせよ週後半は様子見~リスク回避の流れになるだろう。

まとめると、①北朝鮮を巡る緊張が緩和しておらず、②米国の経済指標に弱さが散見され、③欧州の政治リスクが再び懸念される。こうした状態では押し目買いも入りにくい。ドル円はこの先、1ドル100円まで明確な節目はなく、リスク回避の円高が進む可能性がある。日経平均も1万8000円の大台割れが視野に入る。前回のブログで書いた通り、1万7800円程度が下値の目途か。

相場が急展開で反転上昇するには北朝鮮との対話の道が開かれることが要件だ。希望がないわけではない。北朝鮮で11日に開かれた国会にあたる最高人民会議では、外交委員会を19年ぶりに設置すると発表された。

このうち、トップの委員長には、金委員長の信頼が厚いとされる前外相で、党の国際部長や朝日友好親善協会の顧問を務める李 洙墉(リ・スヨン)党副委員長が選ばれた。

また、委員には長年、アメリカとの協議に携わり、北朝鮮の核問題をめぐる6か国協議の首席代表も務めた金桂冠(キム・ゲグァン)第1外務次官や、韓国との窓口機関、祖国平和統一委員会のリ・ソングォン委員長、前・対外経済相の李龍男(リ・リョンナム)副首相などが含まれている。外交委員会の人選から対話モードを強調する狙いがあると見られる。

朝鮮中央通信は、米国によるシリア攻撃を非難する報道の中で、「トランプ米政権は自重、自粛するのが米国の最大の国益だと銘記すべきだ」とも主張、米国に自重を促している。北朝鮮もさすがに開戦した場合、戦局の帰趨は予測がつくのだろう。所詮はチキンレースなのだ。希望がないわけではないと上述したのは、そういうことである。

今はリスクにおびえてダウンサイドを見るしかない。それは仕方がないが、急転直下で事態が変わるシナリオも押さえておきたい。

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広木 隆
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