LOG IN

この相場上昇は危うい

by 広木 隆

日本株が堅調である。昨日の東京株式市場で日経平均は続伸した。日経新聞の市況解説は、「今期の業績見通しや自社株買いを評価する個別銘柄への買いが旺盛だった」とあるが、個別銘柄物色主体で連休の狭間に2日間で250円も上昇したりはしない。東証1部の売買代金は2日連続で2兆2千億円を越えた。確かに、好業績期待はあるが、それは今に始まったことではない。ずっと前から今期の上場企業の業績は2桁増益が見込まれていた。それをやっと評価して買える状況になったとすれば、そのきっかけは、やはり「円安」と「米国株高」なかでも史上最高値更新が続くナスダック総合に代表されるハイテク株の高騰であろう。過去5営業日の業種別株価指数の上昇率トップは「電気機器」である。米国のハイテク株高が日本市場にも波及した格好だ。

米国でハイテク株が買われたからといって、日本市場でもハイテク株が買われるというのは根拠が薄弱だ。しかも、米国株が好調といっても、ごく一部の限られた銘柄が相場全体を牽引しているに過ぎない。S&P500指数を構成する米国の主要500社の時価総額は昨年末から4月末までに1兆2755億ドル増加したが、このうちほぼ半分は上位10社の時価総額上昇によるものだ。さらに言えば、アップル、フェイスブック、グーグル、アマゾン、マイクロソフトの上位5社の時価総額増加額の合計は4600億ドル余りに上る。S&P500全体の実に36%を占める。足元の米国株高は、これらの圧倒的な「勝ち組」銘柄(だけ)によってもたらされている。

こうなると米国の景気がいいから米国株が上昇しているという理屈は必ずしも成り立たない。

むしろ米国景気には黄色信号が点る。先週末発表された米国のGDPの下振れは、1-3月期の統計が弱めに出る季節要因だから心配無用と切り捨てる論調が多い。しかし、本当に、季節要因や天候による一時的なブレと捉えてよいのだろうか。消費動向や住宅の賃料などで軟化の兆しが見え始めている。 米供給管理協会(ISM)が発表した4月の製造業景気指数は54.8と、前月の57.2から低下し、昨年12月以来の低水準となった。予想の56.5も下回った。昨日発表された4月の自動車販売も低調だった。インフレも加速していないどころか、前月比では低下している。

普通なら米国の長期金利は低下するはずだ。ところが4/18につけたボトムを離れてから最近は下がりにくくなっている。ふたつ要因がある。

ひとつはトランプ政権がようやく減税策を打ち出したことだ。実現の目途はまったく見えないが、もっとも明らかになっていないのが財源である。財源もなしに大型減税を進めようとすれば、財政悪化のリスクが高まる。米国債の売り材料だ。

そんなところにムニューシン財務長官が、「超長期債は米国政府の資金調達を支援するうえで完全に理に適う」と発言した。これも米国債の売りを誘い、金利が上昇する要因となった。

もうひとつの要因は需給の歪みだ。シカゴの先物市場でヘッジファンドなど大口投機家の10年債先物のロング・ポジションが過去最大の規模に膨れ上がっている。過去最大のショートがたまっていた少し前の状況の逆転現象が起きている。昨年、大統領選の後、12月ごろからネット・ショートが増え始め、3月にはついに40万枚超という史上空前の空売り残高に達した。この高水準のショート・カバーのせいで10年債利回りは2.6%の壁を越えられずにむしろ低下圧力がかかった。今はその逆である。本来はもっと下がっていいところ、国債価格の上値は投機筋の利食いに押されている(金利に上昇圧力がかかる)。

まとめると、

・米国の株高は、一部の大型ハイテク銘柄が牽引しているもので、米国景気の好調さを反映して株式市場全体が買われているわけではない。
・最近発表された米国の経済指標はすべて低調なものである。天候や季節要因を割り引いても弱さが目立つ。
・米国の長期金利は、本来であればもっと低下して然るべきだが、財政懸念と需給要因でむしろ上昇している。

そうしたことを背景に進んだドル高円安なら、いずれ修正を迫られるだろう。

日本株相場についても、まったく同様のことが言える。


広木 隆
OTHER SNAPS