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熱狂なき楽観・恐怖なき高値

by 広木 隆

「根拠なき熱狂」 - 約20年前、ITバブルへと向かう米国の株式市場を評した元FRB議長・アラン・グリーンスパン氏の言葉だ。それに倣えば、今の米国株相場は、まるで「熱狂なき楽観」とも言える。気味が悪いほどおとなしい。淡々と史上最高値を更新していく。極端なボラティリティの低さ。S&P500が前日から1%を超えて動いた日は今年になってわずか3日しかない。

4月後半からの地政学リスクの後退を受けて恐怖指数と呼ばれるVIX(ボラティリティ・インデックス)は急低下し、ついに10ポイントを割り込んだ。これは2006年12月および2007年1月以来のことだ。

2006年~2007年のチャートを拡大してみよう。

これ以上、下がりようがないところまで下がったボラティリティ。「恐怖指数」の「陰の極」は、裏返せば楽観の極みか。極まれば転ずる。その後はボラティリティが上昇するしかない。マーケットに波乱が訪れる。VIXが10ポイントを割り込んだところから半年後、米国株はWトップの最初の山をつける。そして2007年10月に2回目のピークをつけて大天井を打った。12月には景気もピークをつけてリセッション入り、2008年のリーマンショックへとつながっていく。

株価は景気に半年程度先行する。Wトップの最初の山、2007年7月が事実上の株価のピークだったとすれば、前回のサイクルでは、ボラティリティのボトム⇒株価のピーク⇒景気のピークが半年程度のスパンで生じたことになる。

そのパターンに倣って、足元がボラティリティのボトムだとすれば、株価のピークは半年後の11月、景気のピークは来年5月ごろか?

ちなみに先週発表された失業率は4.4%と前回の景気拡大期のボトム(最低水準)に並んだが、第2次世界大戦以降、失業率が各景気拡大期のボトムに達すると、そこから平均して8.7ヵ月後に景気後退入りしている。あと3か月後に失業率のボトムが来て、そこから9カ月後に景気のピークだとすれば、やはり1年後には景気後退の可能性がある。

むろん、株価のピークはその前にくる。この低ボラティリティ、あまりにも静かな、「熱狂なき最高値」更新が続く米国株相場は嵐の前の静けさではないのだろうか。




広木 隆
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