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NYダウ平均9連騰だが...

by 広木 隆

2年ぶりにロサンゼルスに滞在した。相変わらずフリーウェイは渋滞がひどいが、それでも2年前よりはましになったような気がする。米国の自動車販売は、7か月連続で前年割れが続いている。明らかにクルマの需要はピークアウトしたようだ。一方、テスラを多く見かけた。ショッピングセンターの駐車場の一番便利な場所は充電器の設備があるEV用だ。いかにトランプ政権下のアメリカであっても、時代の流れはEVなのかもしれない。

僕がカリフォルニアで休暇を過ごしている間に、NYダウ平均は9日続伸し、8日連続で史上最高値を更新した。しかし、LAの街に、そんな昂揚感はまったくなかった。それもそのはず、米国株式市場全体が上昇しているわけではなく、ダウ平均構成銘柄のような、一握りの優良グローバル企業が買われているに過ぎないからである。

世界最大の経済大国、アメリカは巨大な自国内マーケットを有する。言い換えれば「巨大な田舎」で、企業の多くは内需企業だ。グローバル企業というほうが珍しい。米国でグローバルに展開する企業は、大企業で優良企業。すなわち、ダウ平均に採用されるような銘柄である。だから、ドル安メリットを材料に買われるのはダウ平均銘柄だけである。ダウ平均が9日続伸してきた期間の他の指数のパフォーマンスをみると、S&P500は横ばい、ナスダック総合は下落している。

ダウ平均が9日続伸してきたこの間に発表された経済指標はどれも冴えないものばかりであった。ダウ平均の連騰が始まったのが7月25日だが、その翌日26日にはFOMC声明が発表された。声明では物価上昇率について「全体でも食品・エネルギーを除くコアでも低下している」と前回から判断を弱めたことからドルが全面安となった。ダウ平均の上昇が加速したのはまさにそこからだ。ダウ平均は、米国の景気指標が弱く、金利が上がらず、ドルが売られる局面を連騰してきたのだ。米国景気は弱く、FRBの利上げは超スローペース、たぶん年内の利上げはこれ以上ないかもしれない、という憶測が高まるなかダウ平均は続伸してきたのだ。業績相場というより金融相場の色彩のほうが強い。だから堅調な雇用統計は少なくとも今の株式市場にはネガティブ材料のはずである。

労働市場が強いことが好景気の反映で、好景気だから企業業績も好調で株が買われた?まったくおかしなストーリーである。雇用が堅調なのは企業業績が好調だからであって(結果)、雇用状況が良好だと企業業績が良くなる(原因)わけではない。むしろ労働市場のひっ迫は賃金上昇など業績には悪影響を与える材料だ(ただ現状はそうなっていない)。

ダウ平均が9日続伸してきた期間のパフォーマンスをセクター別にみると、1位がベライゾン、AT&Tに牽引された通信セクター。そして2位は公益セクターだ。通信、公益のディフェンシブ・セクターがトップ2というのは、まるで不景気の象徴だが、事実、発表されている指標がいずれも弱いので整合的である。3位の金融はボルカールール見直し期待で買われた。4位エネルギーは前述の通り。すなわち、ここ最近のダウ平均の上昇は、米国経済の強さを反映したものではまったくないということである。

決算発表など個別の材料でにぎわう銘柄があっても局地戦で相場全体に広がらない。買われるのはごく一部の銘柄で、その反対に乗り換えで売られる銘柄があるから相場全体があがらない。新規のマネーフローがないということだ。それは、そっくり日本株相場の状況でもある。さきほどの指数のグラフにTOPIXを追加するとこうなる。

つまりダウ平均だけが例外的な動きをしているだけで日米とも株式相場は動きがない、というのが実相である。

相場全体の方向性が出るのは、従前から述べている通り、今月下旬のジャクソンホール以降だろうと思う。


広木 隆
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