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債券バブルの崩壊なのか?

by 広木 隆

まずは反省の弁から。前回のマーケット展望で、「東京市場で大幅安は想定しにくい」「日経平均は2万3000円を割り込む場面もあるかもしれないが、そこでは押し目買いが入るだろう」などと述べたが、結果はご覧の通り。ここまで大きく崩れるとはまったく予測できなかった。

反省するべき点はなにか。好調な企業業績であるとか、米国市場のイールド・スプレッドであるとか、ファンダメンタルズの面からしか考えなかったことだ。相場は理屈ではない。常々自分で言っているのに、理屈で考えた。

考えが及ばなかった点もある。金融資本市場のグローバル化である。金融資本市場がグローバル化していることは常識だ。問題は「そのありよう」に考えが及ばなかったことである。

国際分散投資の基礎になっているのはグローバル市場の相関性の低さであり、それは90年代にBruno
Solnick などが示しているが、グローバル金融危機で経験したように昨今はそうしたアプローチの問題も指摘されている。

僕自身、「金融危機の教訓 分散投資は効かないのか」(2011年)というレポートで書いたことだが、問題は国際市場間における相関の非定常性と非対称性にある。一定の期間で測定された相関は安定的でなく、ひとたび危機が起これば簡単に変化してしまう。そして、マーケットは上昇局面ではばらばらに動く(相関が低い)のに急落局面ではすべてのマーケットが同時に暴落する(相関が高まる)という非対称性がある。

今回の世界同時株安は、急落時にはファンダメンタルズが効かないこと、グローバル市場の相関は非定常性・非対称性があることを改めて思い起こさせてくれた。一週間前の初動の段階で、この点が念頭にあれば、もっと慎重な予想を述べられていたはずであり、反省したい。

一方で、こういう形で急落が起きるリスクについては、ほぼパーフェクトに認識していた。昨今、メディアも報じるようになったボラティリティを巡る問題(リスク・パリティやVIXのインバース等)を昨年からリスク要因として指摘していた。

より重大な問題として、金利上昇を指摘した。昨日の日経新聞には「債券バブル転換点」という記事が載った。記事には、「バブルは株ではなく債券にある」というグリーンスパン元FRB議長の言葉が引用されている。

しかし、いま起きている金利上昇は、本当に債券バブルの崩壊なのだろうか。僕はそのリスクを今年のテールリスクとして挙げたのだ。テールリスクとは、起きる確率は低いものの、もしも起きれば甚大な被害をもたらすものをいう。債券はバブルであるのは間違いないし、バブルは往々にして崩壊する。しかし、崩壊というよりは静かに修正される、というプロセスがないこともないだろう。それはまさしく債券から株式へのグレート・ローテーションである。現在市場は混乱の極みにあるが、それは債券バブルが修正される過程で市場が経験しなければならない「ひとつの通過儀礼」のようなものではないのだろうか。

次回はその点について考察する。


広木 隆
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