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雇用統計に始まり雇用統計で終る - 今週のマーケット展望

by 広木 隆

先週の金曜日は「日経プラス10」で雇用統計の速報をライブで解説した。元日銀審議員の木内さんとご一緒させていただいた。MCの鈴木亮さんのコメントが言い得て妙だった。すなわち、「雇用統計に始まった変調相場も雇用統計で終わった」と。

雇用統計を受けた先週金曜日の米国株式市場は大幅高となった。特にナスダック指数は6日続伸し、1月26日以来の過去最高値更新。つまり、前回の雇用統計を契機に始まった相場の急落分を完全に埋め戻したということである。こうなると、今回の下げはいったいなんだったのだろうと改めて思う。僕が当初から指摘してきた通り、金利上昇は関係ない。先週末の米10年債利回りは前日から4bps上昇して2.89%。それでもご覧の結果だ。

相場の解説記事にはこうある。「雇用統計でNFPが31万3千人増えた一方、平均時給は前年同月比2.6%増にとどまり上昇率が鈍化。景気は良いがインフレが高まらずよって当局の金融正常化ペースも速まらない。適温相場がこのさきも続くとの見方から株が買われた。」

しかし、そんなことは「わかっていた」はずである。今回の雇用統計で注目された平均時給の伸び。前回は2.9%(その後下方修正)になったことで市場の動揺を誘ったが、寒波等の影響で労働時間が減少したという特殊要因によるものだ。その特殊要因が剥落すれば元のペースに戻るだろうということは「わかっていた」はずである。僕が予想した2月の平均時給は$26.75でセント1ケタまでどんぴしゃだった。無論、前年同月比も2.6%で予想通りの結果だ。エコノミストではない僕でさえ(つまり素人でさえ)、この程度は四則演算で算出できる。頭の良いウォール街の連中が、こんな単純なことを見過ごすはずはない。

つまりは、「わかっていた」うえでの狂言だったと考えるのが合理的であろう。どうせ2月の数字が出れば市場は落ち着く。そういう「落としどころ」をみんな「わかっていた」うえで、大騒ぎしてみせたに過ぎないのだろう。

そのから騒ぎも終わった。シカゴのVIXは、急落前の14ポイント台に低下。2月の急落劇に終止符が打たれたと言ってよい。

イベント目白押しだった先週を通過し、今週は材料が少ない。トランプ政権の通商政策も当初の懸念ほど厳しいものにはならい様子であり、北朝鮮を巡る緊張も緩和している。外国人も日本株を売るだけ売った。逆に見れば需給は相当改善している。米国株が落ち着いた今はこの投資環境の改善を好材料と受け止められるだろう。僕は今回の下げの理由を当初から「株価そのものの動き」だと言ってきた。トートロジーのようだが、「株価が大きく下がったから、その後も相場の変調が続いたのである」と。だから、ナスダックの新高値でそれも終わりである。

今週は戻りを試す展開だが、例によって反応の鈍いドル円が重石となって、上値が限られるか。金融機関の期末の売りも佳境となりそうだ。前回の戻り高値22,500円を上限に、まずは22,000円台を固めることが肝要となろう。

日経平均の予想レンジは21,800円~22,500円とする。


広木 隆
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